Bikes Rock!創設者ブレント・バーバーがBFFを語る。

マディソン
自転車に関連した仕事に恵まれている、元メッセンジャー。現在はライター。バイシクルに永遠に惚れている。

BFFって、どんなフェスティバルなの? そのギモンを解くべく、BFF創設者のブレント・バーバーさんに、オンラインインタビューを試みた。インタビュアーは、元メッセンジャーでBFFファンのマディソン。ブレントさんとはBFF東京などの会場で何度か会ったことがあるというマディソンさんによる取材は、当初30分の予定だったが、盛り上がって2時間にも及んだ。これまでのBFFでの思い出深いエピソードから、近年のバーチャル開催での手応え、そして日本にカムバックしたBFF東京への想いなど、画面越しに笑顔あふれたインタビューの模様をお届けする。

「今年のBFFはどうなるかな?」。ワクワクして、ピリピリして、待っている人は少なくない。あなたもそう? 私は絶対にそう!

世界中の国々を回っている「バイシクル・フィルム・フェスティバル(BFF)」は2001年からいままで、思い出に残るイベントを数多く──本当に数え切れないほど、開催してきた。

メキシコシティでのアフターパーティーはみんながすごくノリノリで、ミラノはハイセンスなパリピがDJイベントを盛り上げてくれた。
ニューヨークでのストリートパーティーは、1万人近くものオーディエンスが集まって、BMXランプの設置された会場で、最強にクールなBMXのトリックがみんなの目の前で繰り広げられた。

BFFで知り合って結婚した人たちもいるし、BFFベビーだっている。語りきれないほど、つながっているストーリーはあるだろう。

コロナ禍が始まる数年前までは、すべてのBFFに参加してきたという創設者、ブレント・バーバーさんに、BFFというファンタジックなフェスティバルを少しだけ振り返ってもらった。

イスタンブールの島とライドと花火

「最もロマンチックなストーリーは、たぶん、イスタンブールのBFF」とブレントさんは語る。BFFがトルコのイスタンブールで開催されたとき、1,000名ほどでグループライドをした。
イスタンブール市街地のヨーロッパ側とアジア側どちらも走るルートで1日間、グループライドをしてから、市街地から20kmほど離れたプリンスィズ諸島(Princes' Islands)での上映のため向かった。
プリンスィズ諸島には自動車交通がないから、みんな自転車で貨物船に乗り込んで行った。サイクリングに理想的な島に到着してからは海辺に集まり、上映の時間を待っていた。

「暗くなるまで、それぞれの自転車旅の話を交わしたりしながらね。ちょうどBFFの映画上映が始まる寸前、花火の音がドドドンと響いて、驚いて空を見上げると、きれいな花火が見えたんだ。
その花火は、隣のビーチで行われていた結婚式のための花火だったんだけど、僕たちがいた場所からその結婚式は見えてなくて、何だかわからなかったから、みんなが『 BFFが花火を打ち上げた』と思った。そして、大きな拍手をいただいた。もちろん、そんな予算はなかったけど、タイミングの良い花火でおもしろかったね」とブレントさんは笑いながら振り返る。

作品のもつ「熱」が伝わる瞬間

感動的な思い出というと、1970年代のインディーズ映画、ヨルゲン・レス(Jørgen Leth)監督による「A Sunday In Hell(地獄の日曜日)」が思い浮かぶ。
「ニューヨークでも、ミラノでも、メキシコシティでも毎回、上映後に満場一致のスタンディングオベーションをいただく作品なんだ」とブレントさん。
“北の地獄”の愛称で知られる、260kmもの過酷なロードレース「パリ〜ルーベ」の激戦に迫った1976年のドキュメンタリー映画で、作品中の映画音楽はニューヨークを拠点とするロックバンド、Blonde Redheadのパーチェ兄弟と弦楽による共演だ。
「違うジャンルのアーティストがコラボレートしていて、アートの迫力が強く感じられる内容。そして、その“熱”がBFFのオーディエンスたちに強く伝わっているのが、どの会場にいても、すごくよくわかった」。
ブレントさんにとっても、心に迫る、一番アツいできごとだったそう。

街の「ポジティブな変化」を見つめ続ける

BFF東京のエピソードでは、一番盛り上がったのは、ピストブーム最中の2007年にMASHが来日したとき。世界初公開だったMASHの映画「FAST FRIDAY」を観たあと、彼らの走りを実際に東京の道で体験できるなんて! 自転車好きには贅沢すぎるエピソードで、たまらない気持ちになる。

また、2005年ごろにブレントさんが初めて東京を訪れたとき、こんなできごともあった。
「自転車で東京の街を走っていて交差点で止まったとき、『危ない』とのことで、自転車は車道じゃなくて歩道を走るようにって、やさしく注意されて驚いたよ。

東京もそうだけど、毎年同じ街に戻るたびに、少しづつアップデートされて、変わっていることがわかる。その変化は、それぞれの街でBFFをサポートしてくれる皆さんが、力を合わせたおかげだと思う」。


そう語るブレントさんは、世界中の街のバイシクルカルチャーや自転車環境が、時間とともにポジティブに変化していく様子をしっかりと見つめている。

BFFは、実は「映画祭」という面だけじゃない。自転車好きな人はもちろん、そうでない人もウェルカムな、自転車を中心にしたゆるやかな場。「たまり場」という表現がぴったりかもしれない。
アートの展示会も、パーティーも、ライブも、ライドもあり、サスティナブルなフードが会場で提供されることだってある。驚くほど多種多様なイベントがある中でも、一貫しているのは、すべてが自転車のために行われているということだ。

自由で新しいバーチャル開催の楽しみ方

コロナ禍でバーチャル開催になったBFFは、いつもと少し形が違う。BFFが2020年から始めたバーチャルイベントは、これまでに世界100か所以上での開催を積み重ね、バーチャルならではの新しい楽しみ方が生み出されてきた。

パジャマ姿でポップコーンを食べながら、家族や恋人と、自宅で気兼ねなく楽しむ人もいる。
一方で、まるで映画館に出かけるようにオシャレをして、ホームパーティーをする人もいる(ドア前でチケットをもぎるのだって、忘れちゃいない!)。

ワイルドさで評判のあるアメリカ・テキサス州で実際にあった、少々ワイルドなエピソードもブレントさんが教えてくれた。
「もともとBFFのボランティアをしていた人が、BFF本部への許可なく勝手に野外上映をしたらしいんだけど、上映に来てくれた300人のオーディエンスからいただいた寄付を本部に送ってくれたんだ。そんな形もあるんだなって驚いたし、バーチャル開催になったからこそ、新たな可能性が生まれてきたと実感しているよ」。

「BFF東京」でつながる、集まる

今回のBFF東京のプログラムも、「東京」と銘打っているものの、日本のどこからでも、さらにはアジアや世界のどこからでも、インターネットでつながってさえいれば見ることができる。
現に、BFFの協賛パートナーやPRパートナーが日本各地にいて、サポートをしてくれているし、バーチャル開催ならではの大きな可能性を、このBFFという「場」に集うみんなで共有できるんじゃないかと思う。

さぁ、今年のBFF東京はどうなるのかって? それは、あなた次第。つながり方は、無限大にあるのだから。ブレントさんもインタビューの最後に、こう語っている。

「プログラム上映を楽しみながら、気が向いた人は楽しんでいる様子を写真やビデオで撮って、ぜひBFFのアカウント「@bicyclefilmfestival」をタグ付けしてInstagramで投稿してほしいんだ。
そうすると、その投稿をBFFのInstagramアカウントでリポストして、BFFファミリーや、世界中にいるBFFファンに共有できるし、バーチャル開催だけど、僕もみんなと一緒に楽しめるから。
またみんなで実際に会えるようになるまでは、こうやってSNSで集まっていけたらいいね。Bikes Rock!」。